ラムダ、ミュー、オミクロン…変異株から学ぶギリシャ文字 全24文字のどこまで出現?
世界保健機関(WHO)は11月26日、南アフリカなどで確認された新型コロナウイルスの新たな変異株を「オミクロン株」と命名した。世界的に監視が必要とされる変異株には、ギリシャ文字を冠した呼称が用いられる。24文字からなるギリシャ文字でオミクロン(ο)は15番目に当たる。残りは9文字。新たな変異株の出現はどこでとどまるか。
当初、WHOは変異株が初めて確認された国名を呼称に使用した。5月末、呼称となる国への差別につながる恐れがあるとしてギリシャ文字を使う方針に切り替え、英国株、インド株をそれぞれアルファ(α)株、デルタ(δ)株などと言い換えた。
WHOは感染力が強まったり、ワクチンの効果が下がったりする性質を持つとみられる変異株を「懸念される変異株(VOC)」と分類し、警戒を強める。アルファ、ベータ(β)、ガンマ(γ)、そして現在世界で流行の主流となっているデルタの4株がVOCに指定されている。
今回、オミクロン株がVOCに加わった。オミクロン株は南アのほか、香港、イスラエル、ベルギー、ボツワナなどで確認されている。ギリシャ文字のアルファベット順ならニュー(ν)株だったが、続くクサイ(ξ)と合わせて飛ばされた。ニューとクサイが採用されなかった理由は明らかにされていない。
VOCには至らないまでも、ワクチンの効果などに影響を与える可能性がある変異株は「注目すべき変異株(VOI)」として動向を注視する。南米で最初に確認されたラムダ(λ)、ミュー(μ)の2株がVOIに位置付けられる。
円周率のπ、総和のΣ…数学や物理で幅広く使用
ギリシャ文字は、数学や物理、天文といった幅広い学問で記号として用いられてきた。円周率のパイ(π)、総和のシグマ(Σ)などが有名だ。
変異株に使われることには「ギリシャ文字は現代の価値から切り離された中立的な記号として定着した。日本でイロハニホヘトがナンバリングに使われるのと同様、特別な理由はない」と推察する。
ωまで使い切ったらローマ字か星座か
オミクロン以降のギリシャ文字は、パイ(π)、ロー(ρ)、シグマ(σ)と続き、最後がオメガ(ω)。変異株がオメガを超えて出現した場合、呼称の在り方は改めて検討されるとみられる。
その先を考えるとき、天文学のバイエル符号がヒントになりそうだ。
仙台市天文台によると、バイエル符号は星座を構成する星に明るい順にギリシャ文字を振る命名法。例えば七夕の織り姫星として知られるベガは「こと座アルファ(α)星」となる。
バイエル符号ではギリシャ文字を使い切ったらラテン文字(ローマ字)のAを使用し、その後は小文字のb、c、d…zと続ける。「ただ、肉眼で見える6等星までなら各星座はギリシャ文字の範囲に収まり、ラテン文字に至ることはほぼない」と天文台職員。変異株の呼称もそうなることを願うばかりだ。
また英紙テレグラフ(電子版)によると、星座の名前にちなんで命名される可能性があるという。その場合、オリオン株やカシオペア株が登場することになるかもしれない。